独居老人の暮らしを見守るシステムとは?

中山:はじめに、古賀理事長が協会を作られたきっかけは何だったのですか?
 
古賀:五年ほど前に、地元の団地で独居老人の孤独死が発生しました。ニュースを聞いた後、自治会の会長に会いに行き「何か私たちに出来ることはないでしょうか?」と伺ったのが最初です。会長の話では、「月に一度は様子を見に回っているのでこれ以上は出来ない」ということでした。
 
中山:自治会でカバー出来ることには限度があるでしょうね。
 
古賀:そこで、一人住まいのお年寄りで病気がちの方を約30名ご紹介いただき、ご自宅にテレビ電話を付けさせていただいたんです。毎日決まった時間に安否確認を含めた会話のサービスを行いました。やってみてわかったのは、幾つになっても女性は女性。朝起きて、髪をとかしていないから、化粧をしていないからと、テレビ電話を横に向けてしまうんですね。お金をかけた割には深いサービスが出来ないなあ、と感じて…。それで一度は断念したんです。
中山:現在の緊急通報装置『愛ことば』には、カメラが付いていませんが、そうした経緯があったのですね。
 
古賀:はい。『愛ことば』には毎日の安否確認以外に、「相談」「緊急」というボタンが付いています。それが一緒に出来る緊急情報端末機というのはそれまでなかったんです。相談と緊急に対応するためのコールセンターも現在稼働しています。
 
中山:まずは、『愛ことば』を使った在宅医療支援システムについてご説明いただけますか。

 

古賀:独居、あるいはご夫婦の高齢者の方々の安否確認を毎日取るシステムです。朝、目覚まし時計と同じように、機械のランプが点滅してスピーカーから「安否確認です。安否確認です」と声がするようになっています。朝の9時までにボタンを押していただくと、「あ、今日もおじいちゃん元気だな」とコールセンターでわかるという仕組みです。ですから、9時を過ぎて何人がボタンを押していないのか、そこからが私たちの仕事です。だいたい1日に30人から40人の方がボタンを押さないんですね。その、ボタンを押していない方のご自宅に電話をかけてみて、「ボタンを押し忘れていました」と安否確認ができれば一件解決。連絡が取れない場合は、あらかじめ登録してある近隣支援者の方に連絡をして、安否を確認していただくことになります。
 
中山:「愛ことば」には「緊急」と「相談」、二つのボタンがついています。これはどう使い分けるのでしょうか?
 
古賀:「緊急」だけではなく、あえて「相談」ボタンを設けたのには理由があります。緊急、という言葉が重くて、なかなか押せない方がいらっしゃる。先日も、心臓がばくばくして倒れそうなおばあちゃんが、「相談」ボタンを押されました。つまり、相談と言っても本当は緊急事態の場合もあるんです。中には、用があるたびに緊急、緊急、と押してくるおじいちゃんもいます(笑)。ボタンを「相談」と「緊急」に分けることによって、利用者の方に使いやすくなったと思います。
 
中山:「緊急」ボタンを押したがらない人の場合、日本人にありがちな「人に迷惑をかけてはいけない」、そういう考えに縛られている方もいるのでしょう。その反面、話をしたいだけ、という方もいますよね。
古賀:独居、あるいはご夫婦の高齢者の方々の安否確認を毎日取るシステムです。朝、目覚まし時計と同じように、機械のランプが点滅してスピーカーから「安否確認です。安否確認です」と声がするようになっています。朝の9時までにボタンを押していただくと、「あ、今日もおじいちゃん元気だな」とコールセンターでわかるという仕組みです。ですから、9時を過ぎて何人がボタンを押していないのか、そこからが私たちの仕事です。だいたい1日に30人から40人の方がボタンを押さないんですね。その、ボタンを押していない方のご自宅に電話をかけてみて、「ボタンを押し忘れていました」と安否確認ができれば一件解決。連絡が取れない場合は、あらかじめ登録してある近隣支援者の方に連絡をして、安否を確認していただくことになります。
 
中山:「愛ことば」には「緊急」と「相談」、二つのボタンがついています。これはどう使い分けるのでしょうか?
 
古賀:「緊急」だけではなく、あえて「相談」ボタンを設けたのには理由があります。緊急、という言葉が重くて、なかなか押せない方がいらっしゃる。先日も、心臓がばくばくして倒れそうなおばあちゃんが、「相談」ボタンを押されました。つまり、相談と言っても本当は緊急事態の場合もあるんです。中には、用があるたびに緊急、緊急、と押してくるおじいちゃんもいます(笑)。ボタンを「相談」と「緊急」に分けることによって、利用者の方に使いやすくなったと思います。
 
中山:「緊急」ボタンを押したがらない人の場合、日本人にありがちな「人に迷惑をかけてはいけない」、そういう考えに縛られている方もいるのでしょう。その反面、話をしたいだけ、という方もいますよね。
古賀:夜眠れない、寂しい、誰かと話をしたい、そういう方も多いですね。あるデータによると、20回に1回は本当に緊急の用件があるといいます。私は常に、ファーストコールの重要性というのを言っているのですが、「とにかくボタンだけ押してください」とお願いしています。ボタンだけ押して話が出来なくなる場合もありますが、呼びかけに反応がない場合は近所の方に駆けつけていただくという手段がありますから。やはり周りとの連携が重要ですね。
中山:何かあった場合、どの時点で緊急と判断するのでしょうか?
 
古賀:まず、朝9時までにボタンが押されず、こちらから連絡しても応答がなかった場合、近隣支援者に電話をして利用者のお宅に駆けつけてもらいます。つまり、何かあった場合はその時点で対処できるということです。駆けつけていただいたら、自宅で倒れているのがわかり、すぐに救急車ということが過去何度もあります。誰も見つけてくれなければ孤独死になってしまうところです。
 
中山:なるほど、孤独死のリスクを軽減するうえでとても有意義ですね。他にシステムをスタートして良かった点はありますか?
 
古賀::ご家族から感謝されることも多いですね。たとえば、月一度のお元気コールの時、「変わりはないよ」とおっしゃるけど、様子がおかしいと感じる場合があります。たとえば、普段はおしゃべり好きな方なのに言葉数が少ない、とか。ご家族に連絡して、息子さん、娘さんが駆けつけてみたら、実は脳梗塞を起こしていてしゃべれなくなっていた、ということもありました。また、端末には火災報知器の機能もついているため、火災が起こるとオペレーターのパソコンに「火災」と表示されるんですね。すぐにご本人に連絡するわけですが、隣の部屋でテレビを見ていて気付かない場合もある。私どもが近隣支援者の方に連絡して駆けつけていただき、火事を防いだということもありました。そういうことが何度もあるんです。
 
中山:何度も……。そんなにあるんですか。
 
古賀:通報した近隣支援者の方が消防署から感謝状をいただいて、それが新聞の記事になり、最後に一行だけ「おじいちゃんの家には『愛ことば』という機械がついていました」と書かれたこともありましたね(笑。この間は東京で、近隣支援者にも連絡がつかず、直接消防署に連絡したことがあったのですが、すぐに駆けつけていただいてぼやを防いだこともありました。火災報知器が連動している緊急情報端末機というのは他にないものですから、東京の消防署から、「お宅の活動は素晴らしい」と、感謝の言葉もいただきました。