中山:地方と都心部の状況を比べた時、独居老人、あるいは孤独死の割合はいかがでしょうか。やはり地方の方が多いのでしょうか。
 
古賀:意外ですが、全国で一番孤独死が多いのは新宿区なんです。新宿区に戸山団地というのがありまして、そこが全国第一位です。高齢化率が70%近いんじゃないでしょうか。ついこの間も孤独死が出て、亡くなってから一週間もたっていたそうです。そうした状態が当たり前になっているようです。
 
中山:都会の場合、人はたくさんいても、繋がりがないということですね。
 
古賀:新宿のNPO 法人の方の話によると、交流会を設定して声をかけてもなかなか参加されないようです。特に男性の方は外に出たがらない。ですから、孤独死も男性の方が多いようです。
 
中山:そうした方の場合、直接隣近所に助けを求めるより、こうしたシステムの方が利用しやすく、孤独死を避けやすいかもしれません。全国に支援センターが 50 カ所あるそうですが、具体的にはどのような活動をされていますか?
 
古賀:各地方のケアマネージャーの方々に、「在宅医療支援システム」の意義を説明してまわっています。
中山:説明会や勉強会を開き、在宅医療とはなにか、あるいは介護と医療を融合させることの有益性について、ケアマネージャーさんに浸透させることから始まる、ということですね。
 
古賀:そういうことです。そこが一番大変なところなんです。北海道から鹿児島まで、全国 50 カ所の地域でそれを進めています。東京は50カ所、名古屋や大阪など、首都圏には集中しております。東京ではだいたい 23 区全てにおいて、在宅医療をやっていただける先生の登録は済んでいます。やっとスタートに立てた、という状態ですね。
中山:では、東京で導入される日も遠くないようですね。だいたい何年後をめどにされていますか。
 
古賀:私がこの活動を始めたとき、高齢化のピークといわれる 2025 年を目標の目安にしたんですね。あと14年、ちょうど団塊世代が75歳になるのがその年なんです。ですから、まだこれから3年、5年かけてもいいと思っています。2025 年をキーワードに、医療の様々な改革が行われています。高齢化社会が進むいま、医療費がどんどん高騰しており、毎年1兆円ずつ増加しています。今現在、34兆円の国民医療費が使われていますが、毎年1兆円ずつ増えていくと、2025年には年間60兆から70兆まで高騰するだろうと言われています。
 
中山:まるで国家予算並ですね。
 
古賀:そのため、様々な改革が行われていますが、その一つが介護と医療のベッドを減らす取り組みで、今も病院のベッドを削減する取り組みが行われています。もうひとつは入院日数の削減で、90 日までしか入院できない政策が立てられています。その日数で完治して退院される場合はいいのですが、何らかの病気を抱えたままで自宅に戻った場合が問題です。一番不安なのが高血圧や糖尿病などの慢性疾患。孤独死に繋がりやすいですから。そのため、孤独死を防ぐ意味で、国自体が在宅医療の普及に力を入れているんです。
 
中山:高齢者ご自身も、可能であるなら、病院で過ごすより住み慣れた自宅で医療を受けることに超したことはないでしょう。
 
古賀:私どもの活動目的の一つ目がまさに、「住み慣れた我が家の生活」への貢献なのです。そして、二つ目が医療費の削減へ寄与すること。今現在、入院されている方が在宅医療に変えることによって一人あたり、月額42万円の医療費削減に繋がります。
中山:かなりの効果がありますね。やはり、医師も看護師も足りていないわけですし、在宅医療に切り替えることでずいぶん合理化が図られるのでしょうか。
 
古賀:そうですね。高齢者の方の場合、年齢と共にいくつかの病気を抱えることになるんです。膝が痛い、腰が痛い、通院できなくなると入院したり、施設に入居したりすることになりますけど、ご本人にしてみれば、出来るだけ住み慣れた自宅で診療を受けたいというのが本音ですね。高齢者の方に、終末期はどこで迎えたいかというアンケートをとりますと、半数以上の方が自宅と答えるんですね。子供や孫に看取られながら、自宅で息を引き取りたい。そういうことでした。
中山:シンシアルハートの会員の方にも、こうしたシステムを必要とされる方がたくさんいるはず。まずは情報として伝えてゆきたい、そう思います。たとえば、年老いた親が近くに住んでいるけど、毎日は行けない、そういう方も多いとおもいます。そういう方もまた、このシステムを必要としているでしょう。
 
古賀:結局は、隣近所の方とコミュニケーションをとるための仕組みを作ることが、孤独死をなくすことに繋がると思うのです。「愛ことば」とはつまり、そのための仕組みなのです。
 
中山:この在宅介護、在宅医療のシステムはとても画期的だと思います。親御さんと遠く離れて暮らす人などは、月々3,625 円という金額で見守りをしていただけるなら、ぜひお願いしたいと思う方もたくさんいるでしょう。日本全国にシステムが拡充されることを期待しております。本日はありがとうございました。
 
古賀:地道な作業ですが、コツコツと拡げていきたいと考えています。ありがとうございました。

 

NPO法人 在宅医療サポート協会
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